2020年度入試(2021年4月入学)

小町を指導教員にと考えてこのページを訪れてくれた人、どうもありがとうございます。東京都立大学システムデザイン研究科情報科学域 小町研究室は自然言語処理の研究をしています。情報系に限らず、他分野の学科(人文・教育系を含む)出身で自然言語処理分野の基礎・応用の研究をしたい人を広く募集しています。研究の分かる(できる)エンジニアを輩出することを目指しています。本研究室は言語(英語、日本語)に関する知識、プログラミングに関する知識、機械学習に関する知識のいずれかに優れ、最先端の研究を挑戦する開拓精神に溢れた人をお待ちしています。また、研究室のダイバーシティを高めたいので、様々なバックグラウンドのある方を歓迎します。

内部進学生と外部受験生に共通する話題は共通情報としてまとめてあります。研究生を希望する人はページを分けました

博士前期課程の入試は、基本的に夏季入試で受験許可できる全ての定員が埋まりますので、夏季入試で枠が埋まらなかった場合を除き、冬季入試は受け入れていません。2020年度の冬季入試はもう締め切りました。博士後期課程の入試については夏季・冬季合わせて受け付けています。

博士前期課程の夏季入試の受験を希望する人は、できればその年の3月末までにお問い合わせください(学部生の場合は、学部3年生の段階で問い合わせていただけるとスムーズです)。この場合は研究室の基礎勉強会に(現地またはリモートで)参加していただくことができるので、基礎勉強会に毎週参加することを条件に、優先的に受験を認めます。すでに NLP チュートリアルまたは NLP 100本ノックを独学で解いている人は、ソースコードのリポジトリ一式を見せていただくことで、勉強会の出席に替えることができます。

基礎勉強会に参加しない人については、5月末までに問い合わせのうえ、出願資格審査申請の〆切までに研究計画書をご送付ください(日本の大学を卒業または卒業見込みの人は出願資格審査の申請の必要はありませんが、留学生が不利にならないように〆切を揃えています)。研究計画書はタイトル、学術的な背景・研究の目的、研究の方法、予想される結果、研究の特色、参考文献からなり、A4 で2-4枚で記述してください。入試の出願書類の様式では1枚のみ要求されますが、出願書類の研究計画書とは異なります。また、卒業論文を書いている人は、研究計画書の送付の前に卒業論文を送ってください(日本語で書かれたものでなくてかまいません)。

博士前期課程入試の受験承諾までの手続きです。

  • メールに語学のスコア(英語)を明記して小町に問い合わせ(受験生→教員)

    • 留学生の場合は日本語のスコアも明記してください

    • 卒業論文がある場合は卒業論文を添付してください(2年以上のソフトウェア開発経験者は卒業論文の添付は必須ではありません)。日本語で書かれたものでなくてもかまいません。論文の執筆能力があるかどうか(中にプログラムが含まれている場合はプログラミング能力があるかどうか)を判断します。

  • 定員がまだある場合、研究計画書の提出をお願いするので、研究計画書を送付(受験生→教員)

    • 研究室の基礎勉強会が始まる以前に問い合わせくださった場合は、研究室の基礎勉強会のいくつかに参加をお願いすることがあります

    • 研究室の基礎勉強会に出席する前に、小町と一度オンラインまたは対面での面談を行います

  • 出願資格審査〆切前後から受験承諾書を順次送付(教員→受験生)

    • 研究室の基礎勉強会に参加している人から優先的に受験承諾書を出します(学部の成績や卒業論文、研究計画書はこの段階では重視しません)

    • 研究室の基礎勉強会に参加していない人は、卒業論文+研究計画書を総合的に判断して受験承諾を決めます

    • 研究生として受け入れる場合もあります(博士前期課程の受験のための研究生として受け入れる場合は学部の成績証明書を出していただきます。数学(入試科目に指定されている線形代数と微分積分)および専門科目の成績を見ます。)

博士前期課程入試に関する要約

    • 一般選抜について、留学生については原則的に JLPT N1 に合格している人のみ出願を認めます(JLPT N2 しか受けていない場合は、点数がほぼ満点に近く、日本語でのコミュニケーションに問題がないことが確認できる場合は許可します)。

    • 外国人留学生特別選抜については、文部科学省国費留学生以外は現在受け入れておりません。留学生も一般選抜で出願してください。

    • 社会人特別選抜は、現在受け入れておりません。

博士後期課程入試に関する要約

    • 入試は博士後期課程に進学後の研究計画について口頭発表をしてもらいます。日本学術振興会特別研究員の申請に用いる研究計画書相当のものを提出してもらいます。入学後に必要な数学力・プログラミング力等は研究テーマによるので個別にご相談ください(新入生向けの基礎勉強会への出席は必須としていませんが、人文系出身の人は出席した方がよいです)。社会人博士でない場合は(留学のために必要な)TOEIC 650点(あるいは相当する TOEFL スコア等)を取得している前提とします。社会人博士の人は(在学中の留学を求めないので)英語力は問いません。留学生も受け入れます。

    • 東京都立大学博士後期課程研究奨励奨学金(月15万円支給)への申請には日本学術振興会特別研究員(DC1)への申請が必須なので、課程博士に進学希望の修士または研究生の人は、採択される可能性に関わらず、DC1 に申請してください(進学の前年の5月ごろが〆切)。

    • 2019年より、博士後期課程への進学の前に自然言語処理または関連分野における1本以上の対外発表(査読の有無は問いません)をお願いすることにしました。関連する学会発表がない場合は、まず研究生として入学していただいて、対外発表の目処がついてから博士後期課程の試験を受けていただきます。

語学力について

    • 博士前期課程の一般選抜について、人工知能・自然言語処理系(画像処理や音声処理等含む)出身の学生は TOEIC 650点(TOEFL iBT 60点)未満、それ以外の理工系の人は TOEIC 700点(TOEFL iBT 65点)未満、人文社会科学系出身の学生はTOEIC 750点(TOEFL iBT 70点)未満の方の出願は受け付けません。ただし、このスコアがなくても、帰国子女である、国際会議での発表経験があるなど、研究に必要な能力があることが分かる場合には、受験を認めます。また、日本語で論文を書く語学力がない場合は TOEIC 750点(TOEFL iBT 70点)以上を受験許可の目安とします(英語で研究計画書を書いてもらうことで、判断します)。

    • 留学生で博士前期課程に入学したい人は、原則的に入学までに JLPT N1 を取得していることを前提とします。JLPT N1 を持っていない場合は、英語で書いた論文がある場合に限り、論文の内容に基づき出願を認めます。博士後期課程から入学する人に関しては、自然言語処理、言語学およびそれらの関連分野に関する対外発表経験がある場合は、日本語のスコアは求めません。対外発表経験がない場合は、博士後期課程への入学希望者でも、入学までに JLPT N1 を取得していることを目安とします。

本学以外で自然言語処理の研究ができる大学をまとめています。大学院から自然言語処理を学びたい人は、NAIST か東工大をお勧めします。

博士前期課程について

Q: 他大学からの大学院進学ですが、大丈夫ですか?

A: はい、かまいません。ただし、2018年以降、いわゆる AI ブームで自然言語処理関連の研究室の大学院入試に希望者が殺到しています。うちの研究室を受験して定員に入るのは、研究室を選ばなければ東大・東工大に普通に受かる(希望の研究室に入れるとは限らないが、まず落ちない)レベルの人です。うちの研究室は、うちの研究室の研究テーマに大変興味がある(論文を読み込んでいて、研究テーマを理解している)か、自然言語処理をどうしてもやりたいが、東大・東工大は厳しいかも(うち以外には例えば NAIST の受験を検討している)、という人が受けてください。

また、現在学部生である人は、基礎勉強会相当の知識を全てではなくても独学あるいは所属研究室等で身につけ、かつ B4 の後半は自然言語処理のテーマに取り組む(それを卒業論文にする場合は、小町が指導に入ることを現在の指導教員等に認めてもらえる)ことをお願いしています。合格した場合、10月から入学までは研修生として在籍してもらうことで、研究室の計算機資源等を使ってもらっています(ミーティングは Google Meet を使って参加します)。学期が始まる前に出願のコンタクトしていただいた場合は、うちの研究室の基礎勉強会に(オンライン)参加していただくことで、出願要件を満たすことができます(基礎勉強会のソースコードは研究室の GitHub で公開されます)。

特に大学院から専攻を変える人向けに自然言語処理を学ぶことができる大学を まとめました。漏れがあるかもしれませんが(異動に追従できなくなっているかもしれませんが)、大きなところは網羅していると思います。情報系の学部にいるけどいまいる学部には自然言語処理の研究室がない、という場合、これらの研究室もそれぞれお勧めできるところですので、どうぞご参照ください。

他大学からの受験(都立大の他のキャンパス含む)の場合、受験前に小町まで連絡をください。一度研究室に来てもらって、研究テーマなどについて話してみたいです。

Q: 人文・社会科学系からの進学希望ですが、かまいませんか?

A: はい、かまいません。ただし、2018年以降、人工知能関係の大学院への進学希望が過熱しており、いわゆる文系出身の人が受かる可能性が低くなっています。大学受験までは理系で数学を勉強していた、あるいは大学では心理学や経済学など数学を勉強する分野にいた、という場合はよいですが、大学受験でもいわゆる私大文系入試でセンター試験レベルの数学も勉強していない場合、本学に入るのは難しいです(事務室で大学院入試の過去問が無料で配布されているので、解けるかどうか入手してみてください)。もしそういう人が大学院で自然言語処理の研究をしたい場合は、遅くとも学部3年の前期くらいからは、高校数学〜大学1-2年の理系数学の勉強に時間を充ててください(4年生になってからでは間に合いません)。数学に関して、学部2年次終了程度の情報系の基礎知識(線形代数・微分積分)は未習であれば入試を受ける前に独学で補ってください(下記の「入試について」の中で、具体的な項目を書きました)。

一方、大学院入学試験の数学(理工系の大学2年生程度の微分積分・ 線形代数)がクリアできれば、研究に必要な基礎知識は研究室内で身に付くよう、研究に必要なプログラミング・機械学習(数学)・自然言語処理(言語学)の基礎知識(情報系の学部3年次以降で学ぶ内容)は自然言語処理とプログラミングと機械学習の基礎勉強会を開催しています。プログラミングに関しては入学試験ではチェックしませんが、できれば入学試験までに、そうでなくとも入学までには「プログラミングコンテスト攻略のためのデータ構造とアルゴリズム」の「基礎編」を独習しておいてください(情報系の学部学科では、学部1-2年相当の内容です)。また、入学前に 自然言語処理を独習したい人のために を見て、不足している部分は独習しておいてください。

入学前に必要となる知識は、たとえば以下の「履修しておいたほうがよい授業はありますか?」に挙げてあるような科目を参考にしてください。

本学の大学院では情報系の基礎科目は開講されていないので、人文系出身の人を含め、理工系以外から情報科学専攻に分野を変えたい人には、奈良先端科学技術大学院大学をお勧めしています。奈良先端大 (NAIST) では基礎数学・プロ グラミングなど、基礎的な科目も開講されており、学部を持たない大学院大学なので、分野外から来る人は過ごしやすいです(逆に言うと、都立大の大学院の授 業は分野外から来る人のことは考慮されていません)。また、NAIST は情報科学の基礎知識をある程度保障してもらえるカリキュラムになっていますし、採用側もそれが分かるので就職も良好です。

人文社会科学系出身で自然言語処理の専攻に入ったあと、ソフトウェアエンジニアまたは研究者として活躍している人は、大学受験までは理系だったか、あるいは大学在学中からオープンソースソフトウェア開発で名が知られている人などで、大学院に入ってから数学やプログラミングを勉強したい、という人は、修士で就職したいと思っても、就職活動に苦労するようです。大学院入学前に理工系の数学またはプログラミングをやった経験がない人は、情報系の仕事をしたいなら、博士後期課程に進学する前提でキャリアを考えてください。それらのバックグラウンドのない人文系出身の人が NAIST 以外の大学院で自然言語処理の研究室に入り、修士で就職活動しても、多くの場合は学部で就職できる就職先とほぼ同じである可能性があり、キャリアを変える目的では進学する意味はあまりありません(いったん就職してから社会人博士等で博士号を取る、というような生き方を考えているのであれば、修士号を取る意味がありますので、ご相談ください)。2年間でキャリアを変えたい人は、出家するつもりで NAIST に進学しましょう。

都立大は近くに国立国語研究所という日本語学関係の研究所があり、うちの研究室の学生は定期的にここでプログラミングのアルバイトをしています。これまで内部進学者以外も仏文出身・国文出身・英文出身の学生がアルバイトをしています(人文系出身の学生の方が、国語研でのアルバイトをしています)。

Q: 博士には進学せず、就職希望なのですが、かまいませんか?

A: はい、かまいません。ただし、修士からうちの研究室に来たい人は、博士後期までの一貫課程として、博士後期課程に進学希望の人を歓迎しています。日本の大学の学部生なら(指導教員の許可のもと)進学前の卒業研究を小町のアドバイスを受けながらやる、あるいは留学生なら研究生として入学して進学前に研究に着手する、という場合は、博士後期課程に進学希望でなくてもスムーズに受け入れられます(大学院入試対策のための研究生は受け入れていません)。

就職活動については、他大学から都立大に来て修士の2年間で就職活動をするより、NAIST で2年間過ごして就職活動をしたほうが、圧倒的に苦労しないようです(奈良だと就職活動で交通費がかかると思う人もいるかもしれませんが、長期化しない 限りは大きく交通費はかからないようで、むしろ入社試験の途中から新幹線代が出るために、収支がプラスになる人もいるようです)。2019年現在、うちの研究室に修士から来た人で、ストレートに就職または進学できた人は10人中5人です。残りの人は就職先が決まらないまま卒業したり、就職先が決まるまで留年・休学・退学したりしています(NAIST の場合、10人中9人はストレートに就職または進学できていました。都立大でも、うちの研究室の内部進学者は、これまで全員ストレートで就職しています)。実家から都立大に通える、都内開催の勉強会に参加したい(すでにしている)、卒研で自然言語処理や機械学習を使ったり独学やアルバイトで勉強している、他の研究室はありえず小町の研究室にどうしても来たい、などの事情がない限り、他大学から進学するなら、修士で就職することが確実な人は都立大より NAIST の方があらゆる観点から優れているので、NAIST を検討することを強くお勧めいたします。

博士前期課程の学生は、博士後期課程に進学希望かどうかで指導内容が異なります。進学希望の人の場合は、学振への申請を考慮し、M1 のうちに査読付き国際会議に投稿できるようなサイクルで研究します。進学希望でない人の場合は、国際会議ではなく M2 の時に査読付き和文論文誌に投稿するようなサイクルで研究します。また、深層学習や機械学習をメインとする研究は(現在8割の研究はそうなっていますが)、実装能力が高くないと2年間で成果を出すのは厳しく、入学前にすでに開発経験のない人の場合は、修士の2年間のみで研究成果を挙げることは難しいと思ってください(東大の中山研究室では、他の人の2-3倍研究に時間を割く必要があると言われています)。

ちなみに、博士後期課程に進学希望というのは、博士号取得希望を含意しません。例えば、博士後期課程に進学したあと海外の企業にインターンシップに行き、そのまま博士後期課程を中退して就職してもいい、というような人でもかまいません。また、博士後期課程の学生で日本学術振興会特別研究員(月20万円)に採用されていなかったり、東京都立大学博士後期課程研究奨励奨学金(月15万円)、文部科学省国費留学生等の奨学金等を受給していない場合、RA や TA 等をやっていただく代わりに授業料相当額程度の経済的支援を行います。日本人の場合、日本学生支援機構の第一種奨学金と合わせると、手取りが月20万円弱になります。第一種奨学金は研究業績によって返還が免除される制度があり、これまでの実績では免除の資格のあった人は全員全額免除されています(ただし N=1)。

博士後期課程まで進学して、M2/D1 あたりで1回目の海外(研究留学)、D2/D3 あたりで2回目の海外(Microsoft Research 等企業研究所でのインターンシップ)をしたりして、博士号を取得したら Google や Apple みたいな世界的な企業に入りたいと思っている人が、うちの研究室で推奨したい典型的な学生像となります。

小町の希望としては、経済的な事情から修士で就職するにしても、研究職志望で社会人博士等で博士号を取得したい人に来てほしいと思っています(お茶の水女子大学では、職場の理解も必須ですが、就職と同時に進学し、とりあえず休学しておく、というケースも珍しくないようです。)。就職予定の人でも、卒業後しばらくしてから社会人博士課程に進学することを検討している、というようなケースの人は大歓迎です。 在学中に受験すれば受験料と入学料が不要であり、入学してすぐ休学すれば授業料もかかりません。長期履修制度という、3年分の学費で最長6年間在学できる制度もあります。また、最大3回授業料の半額相当が給付される奨学金もあります。2019年4月現在、うちの研究室には8名の博士後期課程の学生がいますが、うち3名は社会人博士です。

また、研究室では研究開発に関するアルバイト(含む共同研究)やインターンシップを奨励していますが、自分の研究そっちのけでアルバイトやインターンシップをしてよい、という意味ではありません。研究インターンシップ両方やりたい、というような人を歓迎します。

Q: 都立大の他研究室と併願できますか?

A: いいえ、都立大の他研究室とは併願できません(情報科学域では、合格した場合、必ず第一志望に配属されるので、第二希望以下は書かなくてよいです)。また、他大学と併願していただいて構いませんが、本学が第一志望でない場合は出願をお断りすることがあります(合格者に対して定員があるわけではなく、受験承諾書を発行できる人数に定員があるためです)。

うちの研究室の定員に入る人は、基本的には研究室を選ばなければ東大・東工大・京大・阪大等に合格するレベルの人です。それらの大学に合格しても自然言語処理に関係する研究室でなければ行かない、自然言語処理の研究がどうしてもしたい、という人に来てほしいと思っています(学部で自然言語処理に関する研究開発を全くしたことがない状態で、修士の2年間だけ研究しても、自然言語処理や人工知能関係の仕事に就くことは難しいため、博士後期課程に進学することをお勧めします。自然言語処理や人工知能関係の仕事に就かないなら、本研究室ではなく NAIST または JAIST に行くのが常に最善の選択肢です。)。

博士後期課程について

Q: 博士後期課程に進学してやっていける自信がありません。

A: 周囲に博士後期課程の学生がいないと、どのような生活をしているのかイメージができないかもしれませんが、だいたい修士の学生が2年かけてやる研究(=査読つき国際会議論文1本)を毎年やる(=3年間で査読つき国際会議論文3本)、という流れです。それができる人もいますし、できない人もいます。だいたい 博士後期課程に進学した学生のうち、1/3がストレート(あるいは短期修了)で博士号を取得します。1/3が何年か追加でかかって博士号を取得します(つまり、1本の論文に2年以上かかるとそうなります)。1/3はどうやっても博士号を取得できません(つまり、何年かけても論文が書けないとそうなりま す)。しかし、それでも進学する人が少なくないのは、博士後期課程の学生が多い研究室であれば、博士号取得に 時間がかかる、あるいは取れなかったとしても、就職できないわけではない、というのを見ているからです。※博士後期課程に進学して博士号が取れるかは、大学・研究科・研究室によって方針が大きく異なるので、博士号の取得を考えている場合、その研究室における過去の博士号の在籍者と取得者を調べてみることをお勧めします。

小町が博士後期課程の学生に期待するのは、博士号を取得してアカデミア(大学あるいは国立の研究所等)で教員・研究者として研究をする、ということではありません。そ れよりは、新しく自然言語処理や機械学習を用いて研究開発を行おうとしている企業に就職して、例えば人工知能研究所を率いるリーダーや研究開発グループの コアメンバーになって、世の中にインパクトを与えるような仕事をする、ということにチャレンジしてほしいです(特に、海外の企業に就職して海外で活躍する 人が出てきてほしいと思っています)。

博士号を取得した人、というのは、もちろんその分野の第一人者となるわけですが、それ以外の分野も必要とあれば自力で学び、問題点を発見し、必要な 人と協力して問題解決に当たる、という高い汎用的な能力を身につけた人です。その訓練として、毎年1本査読つき国際会議に通す、という目安(ペースメー カー)があるので、世界を支える、そして少しずつ変えていくような仕事がしたい人は、ぜひ挑戦を検討してもらえたらなと思っています。

Q: 博士後期課程に進学したいです。

A: はい、博士後期課程の希望者に関しては、全力でサポートしたいと思います。H27年度から博士後期課程の学生が2名(社会人1人)、H28年度から4名(留学生1人、社会人1人)、H29年度から5名(留学生2人、社会人1人)在籍しています。H30年度の博士後期課程の学生は7人(留学生3人、社会人2人)になりました。H31年度には8人(留学生3人、社会人3人)になる予定です。H29年度には研究室初の博士号取得者が出ました。他には東工大岡崎研究室あるいは NAIST中村研究室荒牧研究室渡辺研究室も検討することをお勧めしています。

また、日本学術振興会特別研究員に採用されれば、3年(DC1)または2年(DC2)の間、月20万円のお給料をもらいながら研究することができま す。自然言語処理は学際的な学問であるため、採択率は割と高い方だと思います(自分が申請書を添削した人のうち、DC1またはDC2が取れた割合は9割程 度です)。本研究室では、これまで2名の学生が採用されています。また、都立大は、DC1 に申請した人を対象に、DC1 が不採択でも3年間(DC2 に採択されるまで)月15万円を給付する奨学金制度(東京都立大学博士後期課程研究奨励奨学金)があります。学振 DC1 より高い確率でもらえる制度ですので、博士後期課程に進学希望の人は早めにご相談いただければ、経済的には多少余裕を持って学生生活を送るアドバイスがで きると思います(日本学生支援機構の奨学金も、本研究室では半分以上の人が全額または半額返還免除またはその候補者になっています)。本研究室の博士後期課程の学生は、社会人博士を除き過半数の学生が月15万程度の奨学金相当のお金をもらっています。

一方、これらの奨学金制度に選ばれなくても、博士後期課程の学生には、理研 AIP での RA(フルタイムでやった場合は、学振相当額)や、その他研究開発のアルバイトを斡旋したりしています(研究成分と開発成分の割合に応じて時給1,000〜3,500円程度)。週2日程度は外部で研究開発しつつ、大学では自分の研究を進める、というような形で研究することができます。

課程博士の人は、博士後期課程に進学しても、自然言語処理分野であれば、ストレートで博士号を取得できる人は企業を含めると就職には困らないので、心配無用です。た だし、博士号を評価してくれる(=博士号を取得したことによって、給料や仕事内容が変わる)企業は少なく、そういう就職先は主に研究所になります。自然言 語処理分野では狭義の研究をする(=論文を書く)ことを主要な業務とできる企業の研究所は日本では恐らく NTT コミュニケーション科学基礎研究所(言語処理関係は京都)および IBM Research - Tokyo の2カ所ですが、最近は研究に理解のある企業も増え、NTT サービスイノベーション研究所(横須賀)、富士通研究所(横浜)、NEC研究所(川崎)、富士ゼロックスR&D(横浜)、楽天技研(東京)、 NHK技研(東京)、ヤフー研究所(東京)、豊田中央研究所(愛知)、ホンダ・リサーチ・インスティチュート・ジャパン(埼玉)を初めとし、いろいろな企業で研究に携わることができるでしょう(新卒採用と違い、専門性を考慮して採用されるため、自然言語処理関係の仕事に従事する可能性が高いです)。ま た、これら以外にも、東大・京大・東工大をはじめとする国立大学や理化学研究所 AIP(東京)、国立情報学研究所(東京)や情報通信研究機構(NICT=言語処理関係は京都)、産業技 術総合研究所(言語処理関係は東京)のような国立の研究所で随時研究員の募集があり、どこにも就職先がない、という状況は極めて少ないです。最近は Google Brain や Preferred Networks など世界的なレベルの研究ができる企業も東京に増えてきました。

博士後期課程では日常的に査読付き国際会議の論文を読み、自らも投稿・発表することが必須ですので、プログラミング力だけではなく英語力も必須で す。博士号取得時には TOEIC 750点は超えているようにしましょう。博士後期課程在学中に、社会人博士などを除き原則として数ヶ月〜半年程度の海外インターンシップあるいは国際共同 研究に行ってもらうことにしています。

Q: 社会人博士は受け入れていますか?

A: はい、受け入れています。お気軽に小町にお問い合わせください。修士号を自然言語処理関連分野で取得されている場合や業務で自然言語処理関係の仕事に従事している場合、博士号取得がスムーズです。会社のフルサポートがない方でも続けられるよう、Google Meet を用いた進捗報告の時間を設けています。業務と関連づけた研究でない場合、3年で修了することが困難である場合が多いですが、3年で取得せずたとえば6年で 取得したい場合、3年分の学費で済む長期履修制度があります(利用実績があります)。

ちなみに、東京都在住の人は入学料が半額になります。また、博士後期課程の学生に対しては、社会人も含め、授業料の半額相当が最大3回まで支給される制度があります。

社会人修士も入試制度としてはありますが、卒業のために修論とは別に20単位(10コマ)の取得が必要であり、M1の授業期間は週3-4 日程度授業を受けに来る必要があります(あるいは M2 でも授業を取るなら、2年間で授業期間の週2-3日程度)。1年間の休職が可能な場合は、1年目に授業の単位数を揃えることで修士号の取得が可能ですし、博士後期課程に進学希望の人は修士号を1年あるいは1年半で取得する短期修了制度もありますので、博士前期課程への入学を希望される場合もご相談いただければと思います。ただし、2020年現在、社会人特別選抜での受験は認めていません。

また、修士号を持っていない場合でも、自然言語処理の研究開発に関する社会人経験が2年以上あり、かつ査読付き国際会議または論文誌での発表経験がある場合は、博士前期課程を経由せず博士後期課程に入学することもできます。研究生として1年在籍し、国際会議等で発表することで要件をクリアすることも可能です。

短期修了や博士号取得に必要な要件等につきましては、個別にご相談ください。

大学院入試について

Q: 英語はどれくらいできればいいですか?

A: 博士前期課程(修士)の出願には英語能力試験のスコアが必須ですので、TOEIC または TOEFL を受験してください。点数が思わしくない人は、何回か受けるとスコアが安定して、最初に受けたときより100点以上スコアが上がることは珍しくありません。研究室に来たときと研究室を卒業するときで、TOEIC のスコアを +100 点することが目標です。

H28年の入試(2017年4月入学)から、外部受験の英語能力試験の基準点を設定しています。H29年以降の一般選抜では、原則として理工系(言語処理、音声処理、画像処理など人工知能系の研究室)出身であれば TOEIC 650点(あるいはTOEFL iBT 60点)未満、それ以外の理工系出身であれば TOEIC 700点(あるいは TOEFL iBT 65点)、それ以外の人文社会科学系出身であれば TOEIC 750点(あるいは TOEFL iBT 70点)未満の方は受験をお断りします(英語で論文等を書いた経験があれば、問題ありません)。

ちなみに TOEIC の平均点は 580点ほど(日本人平均は510点)です。研究室内では、内部進学(筆記試験免除)の学生も学部を卒業するまで(修士進学時)に TOEIC 650点、修士を卒業するまで(博士進学時)に TOEIC 700点、博士を卒業するまでに TOEIC 750点を目標としています(例えば楽天は入社時までに TOEIC 800点が要求されます)。目安として、TOEIC 500点以下の人は論文を読むことが困難、600点以下の人は論文を書くことが困難、700点以下の人は会話することが困難です。

Q: 数学はどれくらいできればいいですか?

A: 過去数年分の問題が事務で配布されているので、入手して解いてみてください。自分で解いてみて7割程度できそうであれば OK ですが、半分くらいしかできそうにない人は試験の準備をしましょう。

数学に不安がある人は「プログラミングのための線形代数」「これなら分かる最適化数学」あたりを当たってみてください。また、ここで書いているのは研究室の基礎勉強会についていくための最低限の知識で、研究室での研究のディスカッションについていくための知識はこれとは別です。

    1. 線形代数では、3x3程度の行列の固有ベクトル・固有値の計算、逆行列や行列式の計算、対角化などができることを想定しています。線形代数は大学1年生相当の範囲全てが対象になります。(人文系の人でも、これらが全てできればいいですが、できない項目が1つでもある人は、できるようにしてから入学試験を受けてください)

    2. 微分積分では、初等関数(多項式、e、log、cos など)の微分、積の微分、合成関数の微分、偏微分などの計算ができることを想定しています。微分積分に関しては高校数学(理工系の大学受験レベル)の微分が理解できていればよく、微分方程式や積分は手がつかなくても構いません。(人文系の人でも、これらが全てできればいいですが、できない項目が1つでもある人は、できるようにしてから入学試験を受けてください)

高校数学は全ての範囲が必要なのですが、どこまで戻って勉強し直せばいいか分からない人は、もどりま表を見てみてください(単元によっては、中1まで戻る必要がある場合もあります)。「もどりま表」で未習部分がある場合、未習部分の全てを入試までに学んできてください。いわゆる文系の学部の人でも、大学受験までは理系で数学を勉強していた、というような人は、特に問題ありませんが、高校時代から文系選択で、数学は高1までしかやっていない、というような人は、相当な覚悟が必要です。数学の独習は難しい、教えてほしい、という人は、NAIST をお勧めします

理工系出身の人は「言語処理のための機械学習」をパラパラとめくってみて、それが理解できる程度の数学力があるかチェックしてみてください。

また、博士前期課程の社会人入試および博士後期課程の入試は英語のスコア提出や数学の試験はありません。

Q: プログラミングはどれくらいできればいいですか?

A: 入試の筆記試験ではプログラミング力は評価しません。ただし、研究室の基礎勉強会は、「プログラミングコンテスト攻略のためのデータ構造とアルゴリズム」の基礎編が(教科書を見てもいいので)解ける程度のレベルを身につけていることを前提とします(情報系の学部1-2年生で履修する内容です)。これが解けない人は、入学してから特に補習はしませんし、最初につまずくとそのまま1年間挽回不可能になりますので、開発経験のない人は必ず入学前に独学してきてください。人文社会科学系出身で、独学も含め全くプログラミング経験がない人は、うちの研究室では受け入れません(プログラミング能力がない場合、進学後に博士後期課程への進学を断念して就職活動に切り替えても、開発に関する職業に就職することが困難であるためです)。

数学力あるいは英語力のいずれかが不足していてもプログラミングの経験があれば補うことが可能なので、人文系出身の人や社会人経験者で、アピールできるプログラミング経験があればお知らせください(ACM ICPC 入賞経験、未踏採択経験、Qiita 記事、GitHub アカウントなど)。数学力および英語力は問題なく、プログラミング能力に不安がある場合は、入学後に基礎勉強会をするので心配しなくてかまいませんが、できれば入学前の基礎勉強会のうち、プログラミング系の基礎勉強会の1つ以上にご参加ください。

プログラミングの経験がなく、数学力も不足しており、英語力も不十分な場合は、本学では入学しても卒業することが困難です。数学力および英語力のいずれも不足しているが、プログラミング能力は抜群にある、という方が本学または情報系の大学院に進学することは歓迎しておりますが、本研究室では受け入れが難しいので、他研究室をご案内します。

Q: 受かるかどうか、不安です。

A: 夏季入試に関しては理工系出身の人で TOEIC 750点以上ある人はだいたい受かります。大学院入試に落ちるのは理工系出身でも TOEIC 750点未満の人か、あるいは TOEIC 750点あっても文系出身で数学が苦手な人です。

冬季入試に関しては極めて選抜の難易度が高く、TOEIC が満点の理工系出身の人でも、数学の出来次第で落ちます(英語はほとんどみんな高得点で、数学の出来で若干名の定員を争うためです)。また、本研究室はここ数年、冬季入試まで定員が残っていません。

Q: 研究計画書には何を書いたらよいですか?

A: 入学してから取り組みたい研究内容について、A4 で2-4枚程度で書いてください。ここで書いた内容を必ずしも入学後にやる必要は全くないので、内容的には自由に書いてもらえればよいです。基本的には、自然言語処理の研究をする能力(リサーチクエスチョンを立てられるか、適切にサーベイができるか)があるかどうかを見るために用いますので、研究計画書の形式で書いてください。どのようなスタイルで書けばいいか分からない人は NAIST の小論文についての記事など読んでみてください。社会人経験のない人は、日本学術振興会特別研究員の研究計画書を参考に記述し、出願前に小町まで送ってください。社会人経験者に関してはこの限りではありません。

また、面接ではこの研究計画書に基づいて質問されるので、提出する前にコピーを取って面接前にもう一度読み返すことをお勧めします(あるいは、研究計画書はコピーを貼り付けて提出してもいいので、最初から電子的に書きましょう)。

※NAIST 志望の方から NAIST の研究計画書の添削依頼を受けることが多々ありますが、一切お受けしていません。本学の学部生が NAIST を受ける場合に限り、NAIST の出願書類の研究計画書に対するコメントはします。

外国人留学生について

Q: 留学生を受け入れていますか?

A: はい、優秀な留学生の進学を歓迎しています。2020年度は博士前期課程に4人、博士後期課程に4人在学しています。様々な国や文化を背景に持つ人の進学を歓迎します。ただし、2019年以降、博士前期課程は文部科学省国費留学生などの奨学金の選抜に通った学生、および研究生として在籍している学生を優先して出願を受け付けます。毎年1-2名しか出願を認めることができないので、ご理解ください(奨学金の選抜に通った人は原則的に出願を受け付けます。それ以外は研究生だけで枠が埋まってしまった場合は、研究生以外の人の出願をお断りします)。博士後期課程は特にこのような要件を設けていません。また、社会人経験のある人は、修士号を取得していなくても研究生を経由し、国際会議等で論文を発表することで、博士後期課程の学生として受け入れることもあります。

また、学術協定を結んでいる大学の人であれば、文部科学省国費留学生の大学推薦制度も利用できますので、お問い合わせください。大使館推薦による文部科学省国費留学生も受け入れているので、第一次選考に合格した人はお気軽にお問い合わせください。ただし、大使館推薦の場合はほとんどの場合(9割以上)本学には配属されません。

Q: 日本語の能力はどれくらいあればよいですか?

A: このページを読んでいる時点で、研究に必要な日本語能力は十分あります。ただし、入学してから大学院の修士の授業はほぼ全て日本語ですし、研究室の基礎勉強会は日本語で行われるので、博士前期課程(修士)に入学する場合、日本語能力試験1級に合格する程度の日本語能力を持っていることを前提とします。

一方、博士後期課程は授業を取る必要がないので、日常生活が送れる程度に日本語ができれば良いです(その代わり、英語の能力が必須です)。基礎勉強会以外の勉強会(進捗報告)は、段階的に英語と併用にしていく予定です。とはいえ、研究室の雰囲気として、みんなでワイワイと勉強・研究・遊び(スポーツ、ゲーム、アニメなど)をする、という感じですので、日本語ができた方が楽しく過ごせると思います。

Q: 日本語ができれば英語はできなくても大丈夫ですか?

A: いいえ、英語も研究には必要です。自然言語処理では基本的に国際会議で最先端の研究成果が発表されるので、先行研究の調査をするために、英語の論文を読む能力が必須です。毎週国際会議の論文紹介を開催していますし、研究のサーベイ期間中には、毎週英語で書かれた論文(1本8〜10ページ)を10本(3ヶ月で100本)リストアップし、3本アブストラクトを含めてざっと眺め、1本は全体をしっかり読む、というサイクルが基本ですので、とにかく多読します。

論文は専門用語が頻出しますが、ほとんどは非英語ネイティブの研究者が書くので、文法自体は中学生レベルです。専門用語さえ身につければ、読解は難しくありません。半年も研究室にいると慣れると思いますので、あまり英文を読んだ経験がなくても、気楽に考えてください。

また、博士前期課程(修士)入試のときは日本語能力試験のスコアの提出は必須ではなく、日本人学生と同様、TOEIC または TOEFL のスコアの提出が必須です。