2018年度入試(2019年4月入学)

小町を指導教員にと考えてこのページを訪れてくれた人、どうもありがとうございます。首都大学東京システムデザイン研究科情報科学域 小町研究室は自然言語処理の研究をしています。情報系に限らず、他分野の学科(人文・教育系を含む)出身で自然言語処理分野の基礎・応用の研究をしたい人を広く募集しています。研究の分かる(できる)エンジニアを輩出することを目指しています。本研究室は言語(英語、日本語)に関する知識、プログラミングに関する知識、機械学習に関する知識のいずれかに優れ、最先端の研究を挑戦する開拓精神に溢れた人をお待ちしています。また、障害のある方、女性、海外出身の方(外国人留学生や海外で学んだ経験のある日本人学生)、社会人経験者(セミリタイヤ後含む)、留年・短期修了(飛び級)など、様々なバックグラウンドのある方を歓迎します。

内部進学生と外部受験生に共通する話題は共通情報としてまとめてあります。研究生を希望する人はページを分けました

2019年1月(冬季入試)の博士前期課程の入試は、2019年4月入学者の定員に達したため募集していません。博士後期課程の入試については受け付けています。

博士前期課程入試に関する要約

    • 博士前期課程の受験希望の外国人留学生を受け入れるのは、海外から直接来日する留学生で文部科学省国費留学生等留学生向けの奨学生か、日本の大学を出た人(研究生を含む)あるいは日本で働いたことがある人のみです。外国人留学生特別選抜で出願してください。夏季入試しか出願を認めません。また、海外の大学を出たが社会人経験がなく、かつ日本で日本語学校に通っている人は研究生としても受け入れませんし、受験も認めません。

    • 社会人経験のない外部受験生は原則として博士後期課程に進学希望の人のみ出願を認めます(ソフトウェア開発経験、プログラミングコンテスト参加経験がある人は問い合わせてください)。夏季入試しか出願を認めません。出願前に研究室の見学を必須としています。また、見学の問い合わせの際に研究計画書を提出してください。

    • 社会人経験者の方は、博士後期課程への進学希望の有無にかかわらず出願を認めます。社会人特別選抜について、英語力に関する要件は求めませんが、在職のまま出願(進学に当たり退職する人は社会人特別選抜では出願できません)し、かつ1年間の休職のできる方のみ出願を認めます。「社会人」とはソフトウェア開発または言語に関するお仕事(アノテーション、言語教育等)をされている方を想定しています。また、退職してフルタイムの学生となる場合は一般選抜で出願してください。基本的に夏季入試しか出願を認めません。

博士後期課程入試に関する要約

    • 入試は博士後期課程に進学後の研究計画について口頭発表をしてもらいます。日本学術振興会特別研究員の申請に用いる研究計画書相当のものを提出してもらいます。入学後に必要な数学力・プログラミング力等は研究テーマによるので個別にご相談ください(新入生向けの基礎勉強会への出席は必須としていませんが、人文系出身の人は出席した方がよいです)。社会人博士でない場合は(留学のために必要な)TOEIC 650点を取得している前提とします。社会人博士の人は(在学中の留学を求めないので)英語力は問いません。

    • 首都大学東京博士後期課程研究奨励奨学金(月15万円支給)への申請には日本学術振興会特別研究員(DC1)への申請が必須なので、課程博士に進学希望の人は採択される可能性に関わらず、DC1 に申請してください(進学の前年の5月ごろが〆切)。

語学力について

    • 理工系出身の学生は TOEIC 650点(TOEFL iBT 60点、または CET-4 級)未満・人文社会科学系出身の学生はTOEIC 785点(TOEFL iBT 72点、または CET-6 級)未満の方の出願は受け付けません(ただし、いずれも社会人特別選抜の人を除く)。ただし、これを下回っていても、国際会議での発表経験がある、または適切にサーベイできているなど、研究に必要な能力があることが分かる場合には、受験を認めます。

    • 留学生で博士前期課程に入学したい人は、原則的に出願までに JLPT N1 を取得していることを前提とします。ただし、もともと日本で暮らしていた、あるいは韓国(中国であれば朝鮮族)出身であるなど、日本語能力に問題がないことがメールおよび面接で確認できた場合は受験を認めます。博士後期課程から入学する人に関しては、日本語のスコアは求めません。

本学以外で自然言語処理の研究ができる大学をまとめています。大学院から自然言語処理を学びたい人は、NAIST か東工大をお勧めします。

博士前期課程について

Q: 他大学からの大学院進学ですが、大丈夫ですか?

A: はい、かまいません。

ただし、2018年現在、いわゆる AI ブームで自然言語処理関連の研究室の大学院入試に希望者が殺到しています。うちの研究室を受験して定員に入るのは、研究室を選ばなければ東大・東工大に普通に受かる(希望の研究室に入れるとは限らないが、まず落ちない)レベルの人です。自分の実力では東大・東工大(あるいは京大・阪大)には受かりそうもないので首都大を受けたいが、首都大に来るなら自分の興味あることをやりたい、という感じでうちの研究室を志望するなら、悪いことは言わないので東大・東工大(あるいは京大・阪大)を受けましょう。うちの研究室は、うちの研究室の研究テーマに大変興味がある(論文を読み込んでいて、研究テーマを理解している)か、自然言語処理をどうしてもやりたいが、東大・東工大は厳しいかも(うち以外には例えば NAIST の受験を検討している)、という人が受けてください。

社会人経験のない人であれば、博士後期課程まで進学して、M2/D1 あたりで1回目の海外(研究留学)、D2/D3 あたりで2回目の海外(Microsoft Research 等企業研究所でのインターンシップ)をしたりして、博士号を取得したら Google や Apple みたいな世界的な企業に入りたいと思っている人が、うちの研究室で受け入れている典型的な学生像となります。修士号を取得して就職したいという人は、このようなサイクルに乗らないので、うちの研究室では原則受け入れていません。例外はソフトウェア開発経験のある人で、そのような人であれば博士後期課程への進学予定がない人でも受験を認めています。つまり、開発経験がなく普通の就職活動をしなければならない、という人は受け入れていない、ということです(新卒で就職活動をしなければならなくても、開発力が十分にあり、任意の段階で就職できそう、と認められる人は受け入れています)。

特に大学院から専攻を変える人向けに自然言語処理を学ぶことができる大学を まとめました。漏れがあるかもしれませんが(異動に追従できなくなっているかもしれませんが)、大きなところは網羅していると思います。情報系の学部にいるけどいまいる学部には自然言語処理の研究室がない、という場合、これらの研究室もそれぞれお勧めできるところですので、どうぞご参照ください。

他大学からの受験(首都大の他のキャンパス含む)の場合、受験前に小町まで連絡をください。一度研究室に来てもらって、研究テーマなどについて話してみたいです。

Q: 人文・社会科学系からの進学希望ですが、かまいませんか?

A: はい、かまいません。ただし、2018年現在、人工知能関係の大学院への進学希望が過熱しており、いわゆる文系出身の人が受かる可能性が極めて低くなっています。大学受験までは理系で数学を勉強していた、あるいは大学では心理学や経済学など数学を勉強する分野にいた、という場合はよいですが、大学受験でもいわゆる私大文系入試でセンター試験レベルの数学も勉強していない場合、本学に入るのは難しいです。

大学院入学試験の数学(理工系の大学2年生程度の微分積分・ 線形代数)がクリアできれば、研究に必要な基礎知識は研究室内で身に付くよう、自然言語処理とプログラミングと機械学習の基礎勉強会を開催しています。プログラミングに関しては入学試験ではチェックしませんが、できれば入学試験までに、そうでなくとも入学までには「プログラミングコンテスト攻略のためのデータ構造とアルゴリズム」の「基礎編」を独習しておいてください(情報系の学部学科では、学部2年相当の内容です)。また、入学前に 自然言語処理を独習したい人のために を見て、不足している部分は独習しておいてください。

数学に関して、学部2年次終了程度の情報系の基礎知識(線形代数・微分積分)は未習であれば入試を受ける前に独学で補ってください(下記の「入試について」の中で、具体的な項目を書きました)。一方、研究に必要なプログラミング・機械学習(数学)・自然言語処理(言語学)の基礎知識(情報系の学部3年次以降で学ぶ内容)は研究室の中の基礎勉強会でカバーされます。入学後夏休みまで、 自然言語処理やプログラミングの基礎勉強会を毎週開催します。入学前に必要となる知識は、たとえば以下の「履修しておいたほうがよい授業はありますか?」に挙げてあるような科目を参考にしてください。

本学の大学院では情報系の基礎科目は開講されていないので、人文系出身の人を含め、理工系以外から情報科学専攻に分野を変えたい人には、奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科をお勧めしています。奈良先端大では基礎数学・プロ グラミングなど、基礎的な科目も開講されており、学部を持たない大学院大学なので、分野外から来る人は過ごしやすいです(逆に言うと、首都大の大学院の授 業は分野外から来る人のことは考慮されていません)。

博士後期課程に進学希望の場合は基礎勉強してかつ研究する時間があるのでかまいませんが、修士で就職希望の人は2年間では基礎から勉強する時間がありません。人文社会科学系出身で自然言語処理の専攻に入ったあと、ソフトウェアエンジニアまたは研究者として活躍している人は、大学受験までは理系だったか、あるいは大学在学中からオープンソースソフトウェア開発で名が知られている人などで、大学院に入ってから数学やプログラミングを勉強したい、という人は、修士で就職したいと思っても、就職活動に苦労するようです。大学院入学前に理工系の数学またはプログラミングをやった経験がない人は、情報系の仕事をしたいなら、博士後期課程に進学する前提でキャリアを考えてください。それらのバックグラウンドのない人文系出身の人が大学院で自然言語処理の研究室に入り、修士で就職活動しても、多くの場合は学部で就職できる就職先とほぼ同じである可能性があり、キャリアを変える目的では進学する意味はあまりありません(いったん就職してから社会人博士等で博士号を取る、というような生き方を考えているのであれば、修士号を取る意味がありますので、ご相談ください)。

首都大は近くに国立国語研究所という日本語学関係の研究所があり、うちの研究室の学生は定期的にここでプログラミングのアルバイトをしています。人文系出身の人を優先的に斡旋していましたが、現在は博士後期課程に進学が決定した人のみ紹介することにしています。

Q: 博士には進学せず、就職希望なのですが、かまいませんか?

A: はい、ただし、ソフトウェア開発経験が1年以上あることを条件とします。かつ、夏季入試を受験してください。ソフトウェア開発経験には、ソフトウェアエンジニアとして働いた経験だけではなく、学生としてプログラミングコンテスト(ACM ICPC、Kaggle 等)に参加した、あるいはオープンソースソフトウェアの開発をしている、またはインターンやアルバイトで開発に従事している、という場合も含みます。メールまたは面談の際に、開発経験についてお聞きします。

博士後期課程への進学希望に関わらず、特に下記のような人に進学してもらえることを歓迎します。

    1. 障害のある方

    2. 少数民族出身者

    3. 女性

    4. 情報系以外出身の人(人文系、物理・数学系などなんでも)

    5. 海外で学んだ経験のある人(ただし、語学留学を除く)

    6. 社会人経験者

    7. 留年している人・短期修了(飛び級)する人

    8. (本研究室で修士号を取得後)海外の PhD コースに進学希望

修士からうちの研究室に来たい人は、博士後期までの一貫課程として、博士後期課程に進学希望の人を歓迎しています(進学希望かどうかで指導内容が異なります。進学希望の人の場合は、学振への申請を考慮し、M1 のうちに査読付き国際会議に投稿できるようなサイクルで研究します。進学希望でない人の場合は、国際会議ではなく M2 の時に査読付き和文論文誌に投稿するようなサイクルで研究します)。ただし、博士後期課程に進学希望というのは、博士号取得希望を含意しません。例えば、博士後期課程に進学したあと海外の企業にインターンシップに行き、そのまま博士後期課程を中退して就職してもいい、というような人でもかまいません。

小町の希望としては、経済的な事情から修士で就職するにしても、研究職志望で社会人博士等で博士号を取得したい人に来てほしいと思っています(お茶の水女子大学では、職場の理解も必須ですが、就職と同時に進学し、とりあえず休学しておく、というケースも珍しくないようです。)。就職予定の人でも、卒業後しばらくしてから社会人博士課程に進学することを検討している、というようなケースの人は大歓迎です。 在学中に受験すれば受験料と入学料が不要であり、入学してすぐ休学すれば授業料もかかりません。長期履修制度という、3年分の学費で最長6年間在学できる制度もあります。また、最大3回授業料の半額相当が給付される奨学金もあります。2018年11月現在、うちの研究室には7名の博士後期課程の学生がいますが、うち2名は社会人博士(長期履修)です。

就職活動については、他大学から首都大に来て修士の2年間で就職活動をするより、NAIST で2年間過ごして就職活動をしたほうが、圧倒的に苦労しないようです(奈良だと就職活動で交通費がかかると思う人もいるかもしれませんが、長期化しない 限りは大きく交通費はかからないようで、むしろ収支がプラスになる人もいるようです)。うちの研究室に修士から来た人で、ストレートに就職または進学できた人は10人中5人です。残りの人は就職先が決まらないまま卒業したり、就職先が決まるまで留年・休学・退学したりしています(NAIST の場合、10人中9人はストレートに就職または進学できていました)。実家から首都大に通える、都内開催の勉強会に参加したい(すでにしている)、卒研で自然言語処理や機械学習を使ったり独学やアルバイトで勉強している、他の研究室はありえず小町の研究室にどうしても来たい、などの事情がない限り、他大学から進学するなら、修士で就職することが確実な人は首都大より NAIST の方が優れているので、NAIST を検討することを強くお勧めいたします。

また、研究室では研究開発に関するアルバイト(含む共同研究)やインターンシップを奨励していますが、自分の研究そっちのけでアルバイトやインターンシップをしてよい、という意味ではありません。研究インターンシップ両方やりたい、というような人を歓迎します。

Q: NAIST 松本研とどう違いますか?

A: 小町が NAIST 松本研出身なので、NAIST 松本研の文化を色濃く受けており、以下のような共通点と相違点があります。

共通点

  • 勉強会(=研究グループ)が主体の研究(→学生が勝手に立ち上げる勉強会も多数)

  • 学生が自分で研究テーマを決める(→最初の研究テーマは研究室のプロジェクトから選択してもよい)

  • 機械学習をベースとする自然言語処理の研究が主体(→言語学的な知識や分析に基づく言語資源構築も盛ん)

  • いわゆる文系出身者も歓迎している(→研究室の基礎勉強会が充実しており、自然言語処理の基礎知識はフォローアップ)

  • 世界トップレベルの研究を(目指して)いる(→大学あたりのトップカンファレンスでの発表論文数は NAIST が国内他組織に大差をつけて1位だが、1学生あたりのトップカンファレンスでの発表論文数はどちらの研究室も同程度)

松本研が優れている点

  • スタッフ数が違う(松本研の方がスタッフが多く、研究指導を綿密に受けられる→小町との相性がいい人は、特に気にならないかも?)

  • 計算機環境が違う(松本研の方が高性能な計算機を大量に使える→学生1人あたりで考えると、特に気にならないかも?)

  • 歴史が違う(松本研の方が20年以上の歴史があり、世界的にも著名→研究的には積み重ねがないので、今後の伸びしろは圧倒的にうちの研究室)

  • 経済的に違う(寮に入れれば月2万円で住居・電気代その他お釣りが来るし、TA/RA もある→経済的に困っていない人は、特に気にならないかも?)

小町研が優れている点

    • 大学の場所が違う(一応都内にあるので各種勉強会等に参加しやすい・通学しやすい→大学での研究・開発以外に興味がある人はドロップアウトするリスクが高まる)

    • 研究の仕方が違う(毎週30分は必ず小町が進捗報告を聞くので、全く成果が出ないということはない→実験結果を他人に見せたくない・原稿を他人に見せたくない人には向かない)

    • 研究室の雰囲気が違う(みんなでワイワイ勉強したり研究したり遊んだりする→グループ行動が苦手な人には全く向かない)

    • 企業との連携が違う(インターンシップやアルバイト、共同研究への参加を奨励している→やらない人にとってはメリットではない)

うちも数回見学し、NAIST に行くことを強く勧めて NAIST に進学した人が入試に関する記事を書いてくれています。

Q: 首都大の他研究室と併願できますか?

A: いいえ、首都大の他研究室とは併願できません。うちの研究室の定員を超えた場合、他の研究室に回ってもいい、と考えているなら、最初からその研究室を第一希望として出願してください(内部進学生はこの限りではありません)。ただし、見学・面談の結果、こちらから他研究室を提案することはあります。あと、入試の面接では一応他研究室の併願についても質問します(合否には全く関係ありません)。

うちの研究室の定員に入る人は、基本的には研究室を選ばなければ東大・東工大・京大・阪大等に合格するレベルの人です。それらの大学に合格しても自然言語処理に関係する研究室でなければ行かない、自然言語処理の研究がどうしてもしたい、という人に来てほしいと思っています(そのため、修士で就職したいという人は社会人経験者以外はお断りしています)。

博士後期課程について

Q: 博士後期課程に進学してやっていける自信がありません。

A: 周囲に博士後期課程の学生がいないと、どのような生活をしているのかイメージができないかもしれませんが、だいたい修士の学生が2年かけてやる研究(=査読つき国際会議論文1本)を毎年やる(=3年間で査読つき国際会議論文3本)、という流れです。それができる人もいますし、できない人もいます。だいたい 博士後期課程に進学した学生のうち、1/3がストレート(あるいは短期修了)で博士号を取得します。1/3が何年か追加でかかって博士号を取得します(つまり、1本の論文に2年以上かかるとそうなります)。1/3はどうやっても博士号を取得できません(つまり、何年かけても論文が書けないとそうなりま す)。しかし、それでも進学する人が少なくないのは、博士後期課程の学生が多い研究室であれば、博士号取得に 時間がかかる、あるいは取れなかったとしても、就職できないわけではない、というのを見ているからです。※博士後期課程に進学して博士号が取れるかは、大学・研究科・研究室によって方針が大きく異なるので、博士号の取得を考えている場合、その研究室における過去の博士号の在籍者と取得者を調べてみることをお勧めします。

小町が博士後期課程の学生に期待するのは、博士号を取得してアカデミア(大学あるいは国立の研究所等)で教員・研究者として研究をする、ということではありません。そ れよりは、新しく自然言語処理や機械学習を用いて研究開発を行おうとしている企業に就職して、例えば人工知能研究所を率いるリーダーや研究開発グループの コアメンバーになって、世の中にインパクトを与えるような仕事をする、ということにチャレンジしてほしいです(特に、海外の企業に就職して海外で活躍する 人が出てきてほしいと思っています)。

博士号を取得した人、というのは、もちろんその分野の第一人者となるわけですが、それ以外の分野も必要とあれば自力で学び、問題点を発見し、必要な 人と協力して問題解決に当たる、という高い汎用的な能力を身につけた人です。その訓練として、毎年1本査読つき国際会議に通す、という目安(ペースメー カー)があるので、世界を支える、そして少しずつ変えていくような仕事がしたい人は、ぜひ挑戦を検討してもらえたらなと思っています。

Q: 博士後期課程に進学したいです。

A: はい、博士後期課程の希望者に関しては、全力でサポートしたいと思います。H27年度から博士後期課程の学生が2名(社会人1人)、H28年度から4名(留学生1人、社会人1人)、H29年度から5名(留学生2人、社会人1人)在籍しています。H30年度の博士後期課程の学生は7人(留学生3人、社会人2人)になりました。H29年度には研究室初の博士号取得者が出ました。他には東工大岡崎研究室あるいは NAIST中村研究室荒牧研究室も検討することをお勧めしています。

また、日本学術振興会特別研究員に採用されれば、3年(DC1)または2年(DC2)の間、月20万円のお給料をもらいながら研究することができま す。自然言語処理は学際的な学問であるため、採択率は割と高い方だと思います(自分が申請書を添削した人のうち、DC1またはDC2が取れた割合は9割程 度です)。首都大は、DC1 に申請した人を対象に、DC1 が不採択でも3年間(DC2 に採択されるまで)月15万円を給付する奨学金制度(首都大学東京博士後期課程研究奨励奨学金)があります。学振 DC1 より高い確率でもらえる制度ですので、博士後期課程に進学希望の人は早めにご相談いただければ、経済的には多少余裕を持って学生生活を送るアドバイスがで きると思います(日本学生支援機構の奨学金も、本研究室では半分以上の人が全額または半額返還免除またはその候補者になっています)。

課程博士の人は、博士後期課程に進学しても、自然言語処理分野であれば、ストレートで博士号を取得できる人は企業を含めると就職には困らないので、心配無用です。た だし、博士号を評価してくれる(=博士号を取得したことによって、給料や仕事内容が変わる)企業は少なく、そういう就職先は主に研究所になります。自然言 語処理分野では狭義の研究をする(=論文を書く)ことを主要な業務とできる企業の研究所は日本では恐らく NTT コミュニケーション科学基礎研究所(言語処理関係は京都)および IBM Research - Tokyo の2カ所で、業務の一部に含めることが可能なのは NTT サービスイノベーション研究所(横須賀)、富士通研究所(横浜)、NEC研究所(川崎)、富士ゼロックスR&D(横浜)、楽天技研(東京)、 NHK技研(東京)、ヤフー研究所(東京)、豊田中央研究所(愛知)、ホンダ・リサーチ・インスティチュート・ジャパン(埼玉)といったところです。ま た、これら以外にも、東大・京大・東工大をはじめとする国立大学や理化学研究所 AIP(東京)、国立情報学研究所(東京)や情報通信研究機構(NICT=言語処理関係は京都)、産業技 術総合研究所(言語処理関係は東京)のような国立の研究所で随時研究員の募集があり、どこにも就職先がない、という状況は極めて少ないです。最近は Google DeepMind や Preferred Networks など世界的なレベルの研究ができる企業も東京に増えてきました。

博士後期課程では日常的に査読付き国際会議の論文を読み、自らも投稿・発表することが必須ですので、プログラミング力だけではなく英語力も必須で す。博士号取得時には TOEIC 800点は超えているようにしましょう。博士後期課程在学中に、社会人博士などを除き原則として数ヶ月〜半年程度の海外インターンシップあるいは国際共同 研究に行ってもらうことにしています。

Q: 社会人博士は受け入れていますか?

A: はい、受け入れています。お気軽に小町にお問い合わせください。修士号を自然言語処理関連分野で取得されている場合や業務で自然言語処理関係の仕事に従事している場合、博士号取得がスムーズです。会社のフルサポートがない方でも続けられるよう、土曜日または平日夕方〜夜の時間帯に勉強会(進捗報告)の時間を設けています(平日昼間以外の方は、基本的に Skype ミーティングです)。業務と関連づけた研究でない場合、3年で修了することが困難である場合が多いですが、3年で取得せずたとえば6年で 取得したい場合、3年分の学費で済む長期履修制度があります(2015年度、2016年度に利用実績があります)。

ちなみに、東京都在住の人は入学料が半額になります。また、博士後期課程の学生に対しては、社会人も含め、授業料の半額相当が最大3回まで支給される制度がありますので、入学金以外は実質半額で在籍することができます。

社会人修士も入試制度としてはありますが、卒業のために修論とは別に20単位(10コマ)の取得が必要であり、M1の授業期間は週3-4 日程度授業を受けに来る必要があります(あるいは M2 でも授業を取るなら、2年間で授業期間の週2-3日程度)。1年間の休職が可能な場合は、1年目に授業の単位数を揃えることで修士号の取得が可能ですし、博士後期課程に進学希望の人は修士号を1年あるいは1年半で取得する短期修了制度もありますので、博士前期課程への入学を希望される場合もご相談いただければと思います。

また、修士号を持っていない場合でも、自然言語処理の研究開発に関する社会人経験が2年以上あり、かつ査読付き国際会議または論文誌での発表経験がある場合は、博士前期課程を経由せず博士後期課程に入学することもできます。研究生として1年在籍し、国際会議等で発表することで要件をクリアすることも可能です。

短期修了や博士号取得に必要な要件等につきましては、個別にご相談ください。

大学院入試について

Q: 英語はどれくらいできればいいですか?

A: 博士前期課程(修士)の出願には英語能力試験のスコアが必須ですので、TOEIC または TOEFL を受験してください。点数が思わしくない人は、何回か受けるとスコアが安定して、最初に受けたときより100点以上スコアが上がることは珍しくありません。研究室に来たときと研究室を卒業するときで、TOEIC のスコアを +100 点することが目標です。

H28年の入試(2017年4月入学)から、外部受験の英語能力試験の基準点を設定しています。H29年以降の一般選抜では、原則として理工系(言語処理、音声処理、画像処理など人工知能系の研究室)出身であれば TOEIC 650点(あるいはTOEFL iBT 60点)未満、それ以外出身であれば TOEIC 785点(あるいは TOEFL iBT 72点)未満の方は受験をお断りします(英語で論文等を書いた経験があれば、問題ありません)。また、上記の点数に満たない方は、受験目的での見学をお断りします(受験する場合は出願前に受験目的での見学をお願いしています)。

ちなみに TOEIC の平均点は 580点ほど(日本人平均は510点)です。研究室内では、内部進学(筆記試験免除)の学生も学部を卒業するまで(修士進学時)に TOEIC 650点、修士を卒業するまで(博士進学時)に TOEIC 730点、博士を卒業するまでに TOEIC 800点を目標としています(例えば楽天は入社時までに TOEIC 800点が要求されます)。目安として、TOEIC 500点以下の人は論文を読むことが困難、600点以下の人は論文を書くことが困難、700点以下の人は会話することが困難です。

Q: 数学はどれくらいできればいいですか?

A: 過去数年分の問題が事務で配布されているので、入手して解いてみてください。H30年度から学部・研究科再編のため、過去問がたくさん渡されますが、「情報通信システム学域」の「線形代数・微分積分」を見てください。自分で解いてみて7割程度できそうであれば OK ですが、半分くらいしかできそうにない人は試験の準備をしましょう。

数学に不安がある人は「プログラミングのための線形代数」「これなら分かる最適化数学」あたりを当たってみてください。また、ここで書いているのは研究室の基礎勉強会についていくための最低限の知識で、研究室での研究のディスカッションについていくための知識はこれとは別です。

    1. 線形代数では、3x3程度の行列の固有ベクトル・固有値の計算、逆行列や行列式の計算、対角化などができることを想定しています。線形代数は大学1年生相当の範囲全てが対象になります。(人文系の人でも、これらが全てできればいいですが、できない項目が1つでもある人は、できるようにしてから入学試験を受けてください)

    2. 微分積分では、初等関数(多項式、e、log、cos など)の微分、積の微分、合成関数の微分、偏微分などの計算ができることを想定しています。微分積分に関しては高校数学(理工系の大学受験レベル)の微分が理解できていればよく、微分方程式や積分は手がつかなくても構いません。(人文系の人でも、これらが全てできればいいですが、できない項目が1つでもある人は、できるようにしてから入学試験を受けてください)

高校数学は全ての範囲が必要なのですが、どこまで戻って勉強し直せばいいか分からない人は、もどりま表を見てみてください(単元によっては、中1まで戻る必要がある場合もあります)。「もどりま表」で未習部分がある場合、未習部分の全てを入試までに学んできてください。いわゆる文系の学部の人でも、大学受験までは理系で数学を勉強していた、というような人は、特に問題ありませんが、高校時代から文系選択で、数学は高1までしかやっていない、というような人は、相当な覚悟が必要です。数学の独習は難しい、教えてほしい、という人は、NAIST をお勧めします

理工系出身の人は「言語処理のための機械学習」をパラパラとめくってみて、それが理解できる程度の数学力があるかチェックしてみてください。

また、博士前期課程の社会人入試および博士後期課程の入試は英語のスコア提出や数学の試験はありません。

Q: プログラミングはどれくらいできればいいですか?

A: 入試の筆記試験ではプログラミング力は評価しません。ただし、研究室の基礎勉強会は、「プログラミングコンテスト攻略のためのデータ構造とアルゴリズム」の基礎編が(教科書を見てもいいので)解ける程度のレベルを身につけていることを前提とします(情報系の学部1-2年生で履修する内容です)。これが解けない人は、入学してから特に補習はしませんし、最初につまずくとそのまま1年間挽回不可能になりますので、開発経験のない人は必ず入学前に独学してきてください。人文社会科学系出身で、独学も含め全くプログラミング経験がない人は、うちの研究室では受け入れません(プログラミング能力がない場合、進学後に博士後期課程への進学を断念して就職活動に切り替えても、開発に関する職業に就職することが困難であるためです)。

数学力あるいは英語力のいずれかが不足していてもプログラミングの経験があれば補うことが可能なので、人文系出身の人や社会人経験者で、アピールできるプログラミング経験があればお知らせください(ACM ICPC 入賞経験、未踏採択経験、Qiita 記事、GitHub アカウントなど)。数学力および英語力は問題なく、プログラミング能力に不安がある場合は、入学後に基礎勉強会をするので心配しなくてかまいません。入試前の受験承諾可否または入試後の研究室の定員のボーダーラインにいる場合、研究計画書に加え、英語力・プログラミング力・数学力を総合的に判断します。

プログラミングの経験がなく、数学力も不足しており、英語力も不十分な場合は、本学では入学しても卒業することが困難です。数学力および英語力のいずれも不足しているが、プログラミング能力は抜群にある、という方が本学または情報系の大学院に進学することは歓迎しておりますが、本研究室では受け入れが難しいので、他研究室をご案内します。

Q: 受かるかどうか、不安です。

A: 夏季入試に関しては理工系出身の人で TOEIC 800点以上ある人はだいたい受かります。大学院入試に落ちるのは理工系出身でも TOEIC 800点未満の人か、あるいは TOEIC 800点あっても文系出身で数学が苦手な人です。ただし、大学院の合格は研究室配属とは独立に判定されるので、大学院には合格してもうちの研究室の定員を超えている、ということはありえます。

冬季入試に関しては極めて選抜の難易度が高く、一般選抜は TOEIC 800点ある理工系出身の人でも落ちる可能性がありますし、すでに定員に達している可能性も高いので、社会人の人は社会人特別選抜で受けることを検討してください。

Q: 研究計画書には何を書いたらよいですか?

A: 入学してから取り組みたい研究内容について書いてください。ここで書いた内容を必ずしも入学後にやる必要は全くないので、内容的には自由に書いてもらえればよいです。基本的には、自然言語処理の研究をする能力(リサーチクエスチョンを立てられるか、適切にサーベイができるか)があるかどうかを見るために用いますので、研究計画書の形式で書いてください。どのようなスタイルで書けばいいか分からない人は NAIST の小論文についての記事など読んでみてください。社会人経験のない人は、日本学術振興会特別研究員の研究計画書を参考に記述し、出願前に小町まで送ってください。社会人経験者に関してはこの限りではありません。

また、面接ではこの研究計画書に基づいて質問されるので、提出する前にコピーを取って面接前にもう一度読み返すことをお勧めします(あるいは、研究計画書はコピーを貼り付けて提出してもいいので、最初から電子的に書きましょう)。

※NAIST 志望の方から NAIST の研究計画書の添削依頼を受けることが多々ありますが、一切お受けしていません。本学の学部生が NAIST を受ける場合に限り、NAIST の出願書類の研究計画書に対するコメントはします。

外国人留学生について

Q: 留学生を受け入れていますか?

A: はい、優秀な留学生の進学を歓迎しています。2018年度は博士前期課程に3人、博士後期課程に3人在学しています。様々な国や文化を背景に持つ人の進学を歓迎します。ただし、原則として博士後期課程のみ受験を許可します。博士前期課程の出願を認めるのは、社会人経験者または文部科学省国費留学生などの奨学金の選抜に通った学生のみです。学術協定を結んでいる大学であれば使える奨学金もあるので、お問い合わせください。社会人経験がなく、かつ博士前期課程の進学希望の留学生は、すみませんが他大学・他研究室を受験してください。

また、学術協定を結んでいる大学の人であれば、文部科学省国費留学生の大学推薦制度も利用できますので、お問い合わせください。大使館推薦による文部科学省国費留学生も受け入れているので、第一次選考に合格した人はお気軽にお問い合わせください。

Q: 日本語の能力はどれくらいあればよいですか?

A: このページを読んでいる時点で、研究に必要な日本語能力は十分あります。ただし、入学してから大学院の修士の授業はほぼ全て日本語ですし、研究室の基礎勉強会は日本語で行われるので、博士前期課程(修士)に入学する場合、日本語能力試験1級に合格する程度の日本語能力を持っていることを前提とします。

一方、博士後期課程は授業を取る必要がないので、日常生活が送れる程度に日本語ができれば良いです(その代わり、英語の能力が必須です)。基礎勉強会以外の勉強会(進捗報告)は、段階的に英語と併用にしていく予定です。とはいえ、研究室の雰囲気として、みんなでワイワイと勉強・研究・遊び(スポーツ、ゲーム、アニメなど)をする、という感じですので、日本語ができた方が楽しく過ごせると思います。

Q: 日本語ができれば英語はできなくても大丈夫ですか?

A: いいえ、英語も研究には必要です。自然言語処理では基本的に国際会議で最先端の研究成果が発表されるので、先行研究の調査をするために、英語の論文を読む能力が必須です。毎週国際会議の論文紹介を開催していますし、研究のサーベイ期間中には、毎週英語で書かれた論文(1本8〜10ページ)を10本(3ヶ月で100本)リストアップし、3本アブストラクトを含めてざっと眺め、1本は全体をしっかり読む、というサイクルが基本ですので、とにかく多読します。

論文は専門用語が頻出しますが、ほとんどは非英語ネイティブの研究者が書くので、文法自体は中学生レベルです。専門用語さえ身につければ、読解は難しくありません。半年も研究室にいると慣れると思いますので、あまり英文を読んだ経験がなくても、気楽に考えてください。

また、博士前期課程(修士)入試のときは日本語能力試験のスコアの提出は必須ではなく、日本人学生と同様、TOEIC または TOEFL のスコアの提出が必須です。H30年度からは、博士前期課程・後期課程のいずれにおいても、英語ネイティブでないかぎり、TOEIC 785点以上(あるいは TOEFL iBT 72点以上または CET-6 合格)の留学生のみ出願を認めます。(ただし、受験には CET ではなく TOEIC または TOEFL のスコアが必要です)。

研究生について

Q: 研究生を受け入れていますか?

A: はい、受け入れています。ただし、4月スタートの研究生を受け入れるのは、大学院進学希望で、かつ TOEIC 785点(TOEFL iBT 72点または CET-6 合格)以上の人に限ります。10月スタートの研究生を受け入れるのは、8月の大学院入試に合格した人で、翌年4月に入学するまでの半年を研究生として受け入れます。4月スタートの研究生の場合、8月の大学院入試に合格した場合、半年間研究生を延長します。10月から研究生になっても特に基礎勉強会を開催していないので、可能であれば研究生になるなら4月スタートで研究生になることをお勧めします。

また、留学生で文部科学省国費留学生の第一次選考に通った方にも研究生としての内諾(許可)を出します。本学が第一希望でなくてもかまいませんが、文部科学省国費留学生の第二次選考に不合格だった場合は、研究生として来日することはできません。文部科学省国費留学生として来日する場合は、4月スタートでも10月スタートでもどちらでも構いません(半年間、東京外国語大学で日本語を学ぶこともできます)。

また、修士号をすでに取得していて、博士後期課程に進学したい場合は、文部科学省国費留学生でなくても研究生としての入学を許可します。

Q: 研究生と一般学生との違いはありますか?

A: 研究生も学生ですので、基礎勉強会を含め各種勉強会への参加に関して他の学生(大学院生、学部生)と同じですし、研究室としては区別しませんが、研究生には学生室の固定座席を割り当てることができない場合があります(例えば2017年度は複数人で1つの席を共有してもらっていました。2018年度以降は座席に余裕があるので、大丈夫です)。また、研究室以外の授業を履修することはできません。

研究を行う(=毎週の進捗報告メンバーに入る)場合、研究生の修了時に研究報告書を提出することで、研究修了証明書の認定を行うことができます(提出しない場合は認定されません)。研究の発表や聴講に関する学会参加等に関しては、学部4年生と同様に扱います。

一点注意しておきたいのは、本研究室で学生が学ぶのは教員とのやりとりからは1割程度で、残りの大部分は研究室の先輩、同期、そして後輩とのディスカッション(雑談含む)からです。研究室に来て研究を行う(これらの話に参加する)かどうかが重要であり、例えば基礎勉強会・進捗報告の日以外は研究室に来ないような人は、研究生・大学院生であっても学ぶ環境を十分に生かすことができません(学位取得に関しては、本人に実力があれば、研究室に来なくても取得できるでしょう)。